社会人からパイロット

社会人からパイロットを目指す方へ、そのヒントと応援をするブログです。航空ファンの方にも楽しんでもらえるよう、業界の出来事に雑感を交えながら紹介していきます。

韓国のLCC

韓国にはLCCを含め多くの航空会社がありますが、韓国国土交通海洋省は新たにLCC3社を認可したようです。(更に申請を待っている会社も数社存在しています)韓国の航空業界は益々熱くなりそうです。

①エアプレミア(仁川空港)

2020年9月の就航を予定しており、初年度に3機の受領を予定。その後は年間2機増機する計画で就航5年後には10機体制を目指すようです。B787-9を導入し、アメリカ・カナダ・ベトナムなど中長距離路線に就航を目指すそうですが、日本でもZIPが話題になっていますが、LCCが中長距離路線で利益を出すのが難しいと言われる中、どう展開していくのでしょう…

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②エアロK(清州空港)

A320を導入して日本・ベトナム・中国など11路線に就航予定。やっぱりLCCと言えばB737A320ですね。路線的に日本のLCCとも被りますから、ますます競争が激しくな
りそうです。


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 ③フライ江原(襄陽空港)

B737-800を9機導入して日本・中国・フィリピンなど25路線に就航予定。


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韓国のパイロットは元々の数が少ないうえに、賃金も安いということで隣の中国に多くのパイロットが引き抜かれています。韓国は大手であってもあまり働きやすそうなイメージは無いので海外からもパイロットが集まりにくいと聞いたことがあります。今後3社は2019年内に400名、2022年までに約2000名を新たに採用する計画だそうです(乗員・地上職合わせて)。しばらくはB737・787・A320がプラチナライセンスとなりそうですね。この3つの限定を持っていれば食べていけそうです。日本もピーチとバニラが
くっついて何とも甘いデザートのようですが、この先の行方はどうなるのでしょう。


パイロット不足

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パイロット不足はとても深刻で各社2030年問題として対策を取り始めています。J社も既卒の自社養成を始めたり、LCCの設立、P社も昨年LCCとして初めての自社養成を発表しました。韓国でも新たにLCCが何社か設立されたようですし、アジア・世界規模で考えればものすごい数のパイロットが足りなくなるようです。この業界でも終身雇用制度の考え方は崩れていて、より条件の良いところへどんどん転職していきます。

一度キャリアがスタートすればフライトタイムは貯まっていきますが、一番難しいのはこの世界に入る最初の一歩。航大や自社養成に挑戦できる人は当然そちらから挑戦するのが良いですし、自費で訓練されている方は最初の仕事を自分でつかみ取らなければなりません。若さがあればそれだけでも武器になりますが、30オーバーの方はそうもいかない。若さに代わる何かを持つことが必要になるかもしれません。英語力でもいいし、航空に関する少し深い勉強をするのも一つの方法かもしれません。社会経験でもいいんです。若い方だったらアメリカなどで経験をつけてCFI+ATPまで取ってしまうのはかなり有利に働くと思います。

これから暫くこのパイロット不足は続くと言われています。年十年かに一度のビッグウェーブです。ネットで検索をかければ海外のプライベート⇒エアラインへのコースなんかも沢山出てきますね。これから目指す方はとにかく諦めずに頑張ってください。才能や能力が必要な仕事ではないと僕は思っています。誰でもできます。でも情熱とか努力が必要な世界であることは間違いないです。訓練中は色々な壁にぶち当たり、凹むことも多いかもしれないですけど『諦める理由を探さない』ことがとても大切な世界です。

このパイロット不足に伴って待遇も改善されてますね。FOでもさっぐり1000万~(プロペラ機だと600万~)というのが今のスタンダードです。でも働いている方からすると沢山もらっている感覚はあまりないのが正直なところですね。小型機で訓練をしている時から、常に情報をupdateさせて、正しい情報を持つ習慣をつけておきましょう。

西日本ではすっかり梅雨の天気が始まりました。これから福岡あたりも天気の悪い日が続きますね。でも僕は福岡がとても好き。ご飯がおいしいし、美女も多い!笑

 

 

路線訓練

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型式訓練が終わるとエマ訓やその他ライン運航で必要となる座学が実施され、いよいよ最後のライントレーニングに進みます。

ここまでくれば…と僕は思ってましたが甘かったです。実運航のプロシージャーやATC、路線や空港研究など勉強しなければならないことがまだ山ほどありました。勿論それだけでなく、教官機長からは「これって何〜?」みたいな質問攻撃は毎回あるし、やっと路線でたものの景色を楽しむ余裕なんて全く無かったです。それでも色々な空港へ行けるのは楽しかったですし、充実感もありましたね。

ここでやっぱり大切になってくるのはAIM-Jの知識。基礎訓練前からとにかく繰り返し読んでしっかり理解し、リビジョンを確実に押さえてある人はここでも余裕が生まれます。RWSLってすぐにわかりますか?滑走路状態表示灯(AIMJ155)ですが、小型機で訓練しているような空港にはついていないですよね。そんなことも改めて教えてくれるわけではないので、初めから自分で勉強しておくと良いでしょう。ATCも自己流では絶対に認めてもらえません。小型機の運航と違ってATCの指示も多くなります。一度に3つ、場合によっては4つくらい来ますから、正確に理解してリードバックしていくことが求められます。

ちょっと想像してみて下さい。アプローチの準備が始まってCDUを入力したと思ったら、キャビンから体調不良のお客様の連絡。そんな時は場合によってはPMが地上と遣り取りをしないといけません。そのタイミングでRWYチェンジ、そして天気も悪い、いつもと違うATC…PMに負担が物凄くのしかかります。SIMだったらここで故障もおこちゃったりします。当たり前ですがOJTでもそんなことは当然やってくるのです。そんな時に「えーと」なんて考えていたら引きずり下ろされます。(笑)

そして難しいのがCRM。色々なキャプテン様がいらっしゃいますから…なんか勘違いしちゃっている人も多かったりします。時代は変わっているので、そんな人は早く去って欲しいのですけど…(CRMについてはまた改めて書こうと思います)

路線訓練が終われば晴れて副操縦士にチェックアウトです。給料も大きく変わりますね。(約3倍??)その日を目指して頑張って下さい!(まだまだ試練は続くのですが…笑)

 

型式限定訓練

就職試験をクリアできれば各社地上研修等はあると思いますが、いよいよ限定取得訓練に進んでいきます。数名で同期となって訓練を進めていくんですが、とにかく勉強漬けの日々でした。CBTでシステムなどを勉強して、そこからFBSと呼ばれる動かないシュミレーターで各種プロシージャーやシステムを学び、最後にFFSで操縦の練習をします。FFSに入るころにはマニュアルで操縦すること以外は何でもできるという状態を作っていくんですね。僕はB3でしたのでそれほど広いコックピットではなかったですけど、それでも『ようやくここまで来れた!』と感動したことを覚えてます。

最初は30mを超える機体のタキシングは難しくて思うようにいかないですし(SIMは実機に比べセンシティブに反応します)、上昇レートもこれまでには経験をしたことのないパワーで上がっていきますが、FFSも後半に来れば大分いろいろなことができるようになってきます。はじめから終わりまですんなりいく人もいますが、そうでない人の方が多いです。ここまで来るとみんな必死で取り組みますが、ギリギリのところまで追いつめられるので、人間性が出てくるんですね。一人では勉強しきれないので、とにかく同期と情報交換をしたり励ましあって乗り越えた時期でした。

日本での限定訓練は航空会社に所属しなければ受けることができないですが、アメリカをはじめとする海外では個人でもライセンスが取得できます。B3とかA320とか、旬なタイプレーティングを就職前に付けてみるのも面白いかもしれないです。『B737 FCOM』とか『B737 FCTM』等と検索をかければ、オッフィシャルではないかもですが各種マニュアル類を覗き見ることが出来ます。大体どのくらいの勉強をしなければならないかの目安になるのではないでしょうか。小型機のときとはボリュームが全く違います。ただこれは型式限定を取得するときに勉強すればいいことなので、いま予習をする必要はないです。

この限定訓練以降は決められた時間数で訓練が進んでいきます。これまでは人によって短い時間で仕上がる人もいればちょっと多めに飛んだ人もいるかもしれないですが、ここからは違うんです。出来なければフェイルという事になりますから、基礎訓練の時からそういった意識を持って訓練を進めていくと良いと思います。正直、教官には当たりハズレがあります。晴れてチェックに合格すれば、ようやく実機へと進めることになります。型式が入ったライセンスを貰った時はこれまでの訓練期間で一番うれしかったです。たった一行ですけどね。(笑)

 

 

集中力

パイロットは航空法で乗務時間が設定されています。僕の会社では1ヶ月100時間以内、3ヶ月270時間以内、年間1000時間以内という具合です。ごくごく普通の会社員を経験した僕は『働く時間がそんなに短いの?すばらしい!』と思ったものでした。でもこれはあくまで乗務時間であって勤務時間ではありません。ちなみに乗務時間60時間と90時間では疲れ方がものすごーく違います。

同じ社内でも事務職をされている人達から見れば僕達の働いている時間は短そうに見えてるかもしれないです。しかし土日早朝深夜も関係なく働いてますし、スタンバイが入ったり…実際の拘束時間は一般的な社会人と変わらないかもです。それに定期審査前は勉強しなければならなかったり、今は各社お酒の飲み方もかなり厳しくなっていたり…意外と自由な時間は少ないかもしれません。

さて集中力という事で、運航時、乗員は気が張ってますがフェーズによって多少コントロールすることをしています。またオートパイロットはパイロットの余裕に生み出してくれる素晴らしいものです。その余裕を計器のモニターなど、他のところ分散していきます。しかし訓練中はそうはいかない。そもそも小型機の訓練時はオーパイなんてなかったですし。僕は訓練時、かなり失敗を引きずってしまうタイプでした。『あー、なんでさっきあそこで失敗したかな』とか『こうすべきだった』とか。でもそう思ってしまうと失敗が次から次に襲ってくる。もう負のスパイラル状態。なので失敗は降りてから反省することに決めて、上空では忘れることにしてます。過去は変えられないし、1分で数マイルも進んでしまう乗り物に乗ってる以上、頭は常に先に持っていく必要があるのです。そうは言っても…というのが人間で、僕は何冊もその手の本を読んだりしました。その中で役に立った2冊を紹介します。

 

  

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基礎訓練中は『パイロットは一点集中はダメだ』ってみんな言われますよね。それを『散漫たる集中力』と表現される方もいます。パイロットとしては適度な緊張感の中、リラックスしてあらゆるものを情報として捉えることが必要だということです。緊張しながらリラックス??矛盾してるようですが、この表現が的を得てると思います。

また『今日の訓練にどう臨むか』ということを考えたとき、過去や未来に気を取られると失敗する経験を何度もしました。『失敗をひきずる』というのが正にこれです。そして逆に成功を意識した時、失敗を恐れて怖くなって上手くいかなかったことも何度もありました。集中するときは『今』だけに注意を向けることが必要です。

ちなみにイチロー選手が心・技・体で最も大切にしているのは心だそうです。心はその他の2つに比べ、結果に敏感に反応し折れやすいからです。なのでパフォーマンスを落とさないために現在の得点や打率は見ないようにしているそうです。

僕もまだまだ未熟ですが、限られた時間を最大限有効に使うことができる『集中力』をこれからも高めていきましょう。